前回
いよいよゴジラ・シアターも平成へ
1984年、「メカゴジラの逆襲」までの昭和ゴジラシリーズの設定をリセットし、今で言うところのリブートをコンセプトに制作されたゴジラ(1984)。
こちらの続編として5年後に公開され、後にvsシリーズと呼ばれる平成のゴジラ対○○の第一弾、それがvsビオランテ。今作です。
vsシリーズは、ミニチュア特撮が極まり、CG本格化前夜となる90年代の怪獣映画の特異点とも言うべき時期の作品群です。近い時期にはゴジラに限らず、平成ガメラ三部作や平成モスラ三部作など、特異な人気を持つ作品も数多くございます。
そんな世紀末の怪獣映画ブームのきっかけとなった本作ですが、個人的な好みを言わせて貰うと、vsデストロイアとvsスペゴジとvsメカゴジラとvsモスラの次に好きです。
1年ペースでゴジラ撮ってたのやばいなあ
VSのつくゴジラシリーズは、フォーマットが定型化されたのが実は第三作「vsキングキドラ」からで、それまでは年一の定番企画ではありませんでした。(84年ゴジラ、89年公開のvsビオランテ、91年公開のvsキングキドラ)
リブートである84年ゴジラはともかく、本作と定期化第一弾のvsキングキドラには映画として評価するうえでひとつ大きな難点がございます。
なんか設定回りフワフワしてるししょぼく見える
年一企画として型が確立したvsモスラ以降と違って、新しい映画作りを模索した結果ずっこけた要素がところどころあるんですよね。
じゃあ行儀のいい後半の作品だけ見てればいいのではないかとお考えかもしれません。ですが本作と、vsキングキドラに共通する、劇場で絶対に見るべき要素がございます。
ゴジラと対決するライバル怪獣を90年代のミニチュア特撮で見られるのはこの作品だけ、ビオランテが見られるのはvsビオランテだけ。
結局怪獣ならなんでもいいのかと聞かれたら、回答を差し控える。
アマプラあるよ
https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B00JO60BIM/ref=atv_dp_share_cu_r
というわけで見てきましたVSビオランテ。やはり、映像の迫力は見事なもので、チケット代の価値はあったというものです。
迫力の操演、圧巻の模型特撮。アナログ怪獣映画好きにはたまらない要素が敷き詰められた素晴らしい映画です。
そして、スクリーンで見たことで僕のこの映画に対する誤解が解けた
わけではありませんでした。
だってヘンなんだもんこの映画!真っ当でないもんを真っ当って言ったらウソだよ!!
まず、この映画のヘンなところはあの有名な宇宙に放たれる沢口靖子…ではありません。
実はこちらのvsビオランテ、ゴジラに対抗できる核を無効化できるバクテリアが、ゴジラ無き後の世界のパワーバランスを崩すという、すごくまともなテーマでストーリーを走らせています。
その設定を使ってやることが、アメリカの軍需産業のエージェントが自衛隊に先制してぶっぱなす、謎のアラビアンスナイパーもそれに介入する、本当に説明なく登場する超能力。
いや、テーマはいいんだから諸外国の描写いらないじゃん。匂わすだけでもストーリーにはなるよこれ!!特に、この作品には黒木特佐や権藤一佐など、vsシリーズ中でも屈指の人気キャラが登場するので、尚更ヘンな外国人の描写がずっこけて見えます。
ストーリー上の必要性もこいつらにはありません。ビオランテの登場も、白神博士の暴走だけで済む話に、わざわざ変なスパイの銃撃戦を被せてきます。ゴジラ復活に関しても、アメリカの産業スパイがゴジラが前作にて落下した三原山に爆弾を仕掛けて脅迫、という筋書きに一応なっています。
ですが、べつにこいつの爆薬関係なく序盤からゴジラ起きてきそうな描写がありました。シリーズに頻出するG細胞同士の共鳴もありましたし、ヘッポコスパイどもの必要性の無さは何度見ても浮きすぎてイライラします。
冒頭のヘンテコ銃撃戦で流れるアップテンポアレンジのゴジラのテーマといい、明らかに当時の流行りをノリで入れたような描写がこいつらに凝縮されています。
謎に最後まで生き残ったアラビアン産業スパイを締まらない感じで成敗したときの「バットマンみたいだったわ」という台詞には鑑賞回数ぶんの舌打ちをしております。
時期はズレてるけど楽曲がところどころクリストファー・リーヴ版スーパーマンっぽいのも、もしかしてそういうこと?
流行でノリで入れちゃった要素と言えば、次作vsキングギドラで登場するヘンテコスライド偽ターミネーターも大概ですが、あっちはゴジラを消すタイムトラベルという設定ありきの産物で、こっちは核の抑止力とゴジラというちゃんとしたテーマからの大いなる脱線です。やっぱりヘンだよこの映画。
ノリで入れちゃった要素と言えば超能力。小高恵美演じるサイキッカー少女三枝未希は本当に説明もなく登場します。そしてわけわからん産業スパイバトルに尺もってかれたので事後の説明も大して行われません。
この三枝、本作のよくわかんないポっと出ヘンテコキャラ…ではなく、vsシリーズほぼ皆勤の主要キャラクターになります。
そう、前回鑑賞した「コング対」がそうであったように、本作もまた、シリーズのフォーマット作りに大きく貢献しているのです。こういうの怪我の功名って呼んで正解ですかね?
作品ひとつひとつのクオリティは大事ですが、粗削りな要素を目いっぱい放り込んでみて、結果よかった要素を引き継いで後期作がイイ感じなることも、古い続編群の持ち味でしょう。我々は少し、ユニバースなどとキッチリしすぎた作品作りに慣れすぎてしまったのかも知れません。
とにかく、怪獣ズドーンは圧巻の一言で、ストーリーラインもまあ、そこまでアレじゃない…とは言えないなあ。やっぱニセ産業スパイバトル意味わかんないや。でもこれと変な未来人があったから、サイキッカーいてもストーリー真顔で回せるvsモスラ以降の構成ができたんだよなあ。難しいね。
私みたいに見落としている人がいたら是非見て欲しい。あなたの感想も聞きたいから。
次回