ひとの感想が聞きたいからまずは自分から書いてみよう

アマプラで見た映画の日記です。すかしたレビューもします。

今ならアマプラ無料、ザ・レポートの感想/アダム・ドライバーが押しつぶされ苦悩する、これはもうスターウォーズの政治劇。

定期更新スターウォーズ出演者ひいきレビュー

ゴジラ出演が70億点加点なら、ユアン・マクレガー出演が66億点加点の評価をする当ブログですが、無論他のスターウォーズシリーズ出演者についても同じ評価基準でいきます。

今回の主演俳優は、エピソ…あれとアレとソレでカイロ・レンを演じたアダム・ドライバー。あんな信念どころか目的もない映画で、脚本がおろそかにしたキャラ付けを、演技だけでカバーした名優です。

↓レビュー動画はこちら↓

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あらすじ

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視聴ページはこちら

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B089T8Z1GF/ref=atv_dp_share_cu_r

政界での出世に燃える若きダニエル・ジョーンズは、オバマ政権発足後に、チャンスとなるポジションを獲得する。

それは、ブッシュ政権が行った9.11に始まる対テロ戦争の暗黒面。CIAが行ったとされる不正な尋問法、拷問に関する調査だった。

数年にわたるレポートの作成の過程で、ダニーはやがて良心から文章の公開を望むようになる。

だが、面子ひいてはアメリカの諜報の信頼が損なわれることを恐れたCIAは、ジョーンズの存在ごとレポートを抹消するため動き出した。

この映画のココが面白い!

正義と現実、出世と理想、ひとつの表情で100悩むアダム・ドライバーが、実話ベースのドキュメンタリーと政治劇をより一層面白くする!!!

ただの実話ベースのドラマ、そこまで凝ったひねりやギミックのあるものではありませんが、なんと言ってもアダムの表情がたまらない!

とにかくこの要素で引っ張る映画というファーストインプレッションです。

脚本に関しても、確かに凝ったひねりはありませんが、観客を飽きさせない工夫、劇的な展開を、ノンフィクションベースながら実現しています。

前半は、回想のCIAと現在のダニーを行き来するドキュメンタリーチックで、事実を暴くパートです。ここで明らかになった情報を見て、後半はこれを公開するか否か、国の面子すらかかった是非を問う構成です。

この前半後半の分け方が非常に上手で、淡々と語られた事実の恐ろしさに戦慄し、正義感に駆られていく過程は、アダムの演技も相俟って感情移入せざるを得ません。

ドキュメンタリーでありながらドラマチック。そして、アメリカ人・アメリカという国が、過去の過ちにどう向き合うのか。登場人物のそれまでの行動を総括する、彼らの哲学を語るラストの描写は、本当に素晴らしいです。

 

私みたいに見落としている人がいたら是非見て欲しい。あなたの感想も聞きたいから。

今ならアマプラ無料、「名探偵ポアロ ベネチアの亡霊」の感想/探偵がやってきて全部自分のジャンル映画にしてしまう、今日の犠牲者はシャイニング。

かえってきたアマプラ無料映画無責任感想ちゃんねる

10月から11月にかけては、元から張り付く気マンマンだったゴジラ・シアターの再上映はともかく、ビートルジュースなど、新作で見たい映画が多いシーズンでした。

忙しさはそのまませっせと劇場に足を運ぶもんだから、アマプラ無責任レビューシリーズはじつに二か月ぶりです。

さて、今回ご紹介致しますはかの名探偵エルキュール・ポアロの小説を映画化した「ベネチアの亡霊」。監督・主演はケネス・ブラナー

マイティ・ソー」などでメガホンをとった経歴もある、監督・俳優歴の長い大ベテランです。

彼が主導するポアロシリーズ、実は本作が3本目。脂ものってきたシリーズの、ベテランによる、有名原作の映像化。期待値は高く持って良いのでしょうか。

 

二か月ぶりの平常運転ブログ記事、じつは動画投稿も並行して始めたので、ぜひ。

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あらすじ

*1

視聴ページはこちら

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0CGVS8RNY/ref=atv_dp_share_cu_r

探偵稼業に疲れ、引退して身を引いたポアロ

ベネチアの邸宅にて、ボディーガードを雇って全ての来客を追い払い続ける彼の元に、旧友の女流作家アリアドニ・オリヴァが訪れる。

流行り病の子供死んだ霊が出ると噂の屋敷にて、主人が招いた人気霊媒ジョイス・レイノルズがオカルティックな儀式を行う。

オリヴァの情報に好奇心を抱いて引退を退いたポアロは、ハロウィーンの最中、幽霊屋敷へずかずかと足を踏み入れるのであった。

この映画のココが面白い!

シャイニングばりにガッツリホラーな演出を、ポアロが理論と実証と空気の読めなさでぶち壊す、ジャンル映画の事故が起こす化学反応のテンポがたまらない!

原作は古典と言って差し支えない年代の遠い時期に出版された作品で、プロットは極めて基本に忠実、と言うか基礎を組み上げた作品のひとつです。

ともすればチープ、ありきたりに見えかねないことが原作の古さのデメリットです。

しかしこの作品は、探偵モノらしくスマートに問題を解決しています。

まず幽霊屋敷という事で、ホラーの要素も少しは含まれるわけですが、この映画のホラーシーンは、メインを疑うレベルでしっかり怖がらせにきています。

というかほぼシャイニングです。

それのどこが探偵らしいやねんという話ではありますが、剥き出しのシャイニングの雰囲気を、ポアロのターンが始まった瞬間に、一気に推理を聞かせてしまう構成が見事なのです。

霊が出ようと死人が喋ろうと、これは幻覚これは協力者がスイッチ押してるだけ、などと逐一原理を暴いてマジレスします。その指摘のシーンも面白く作られています。

階段を降りながら、地下室の扉を蹴破りつつ、移動の最中のアングルでロジックを説明するものですが、ダレる展開になりません。

探偵小説自体、スパイもののように、色んなジャンルvs名探偵をやるのが本来の魅力で、ある意味原点回帰と言えるのではないでしょうか。

古い原作ただのリブートで済ませず、主演にして監督のブラナーのコテコテな偏屈中年を画面の真ん中に、舞台演劇のような大袈裟な身振り手振りやシーンの切り替わりで魅せる。現代のエンターテインメントと古典の融合が、私にとって非常に魅力的でした。

上映時間も100分代で、サクっと楽しめます。

 

私みたいに見落としている人がいたら是非見て欲しい。あなたの感想も聞きたいから。

 

 

*1:画像引用元

eiga.com

無論、ゴジラ-1.0/Cを劇場で見られるのであれば。

前回

その映画、スクリーン初登場じゃないし、ゴジラシアターの映画ひとつ飛ばしたよね?

シンゴジオルソを忙しくて見れなかったと宣うくらいですから、-1.0の別バージョンは言うに及ばずです。

また、最近になって映画を見られる時間が戻ってきたとは言え、別にヒマになったわけでもなく、ゴジラ・シアターにて公開された初代の別バージョンを見過ごしました。

俺はゴジラオタクなのか…?

いやでも、当時仕事めちゃんこ忙しかったのに、無理やり時間できたタイミングのレイトショーで見ましたよ。パンフレットは時間が時間で店員さんダルそうで申し訳なくて買えなかったので、今回の再上映で改めて買いました。

マイナスへの再生、モノクロに画面をひっくり返してみたならば。

*1

オリジナルも

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0CVTQ6YKV/ref=atv_dp_share_cu_r

モノクロもアマプラ無料です

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0CVFCZ3MR/ref=atv_dp_share_cu_r

もういっかいマイゴジをスクリーンで見られて滅茶苦茶楽しかったです。

この映画の高評価は、私の駄文で語るまでもないことは明白です。

ゴジラ70周年に、終戦という日本人の魂のテーマを扱い、見事やってのけた紛れもない名作。

ゴジラの登場時間はシンゴジに比べるとかなり控えめですが、その分人間ドラマをしっかりやって、映画の芯が一本立ってどっしり構えた作品です。

この人間ドラマでどうにかしたという部分も、怪獣映画業界的にはかなりの快挙です。

「怪獣を見に来たのに人間ドラマパートダレすぎ」というのは、我々が常々抱え続ける課題でした。そこでマイナスワンにおいては、「シンプルに感情移入しやすいテーマをもってきて、俳優にしっかり演技させる」といった基本を見直す戦略を取り、見事成功させました。

NHK朝の連続テレビ小説で頻繁に扱われるテーマですが、映画の尺に収めることで、結果的にテンポよく仕上がっております。スクリーンのスケール感も相俟って、モキュメンタリー的な見え方もします。

そして、当時忙しくてバージョン違いのための時間が取れなかったモノクロのマイナスワン。

オリジナルよりもいいという評判でしたが、個人的にはまあオリジナルでいいかなと思いました。

というのも、モキュメンタリー風味で人間を描いたドラマパートが肝です。テーマこそ終戦反戦ですが、根本の内容は破壊からの再生という人間賛歌。どの時代にも通じるテーマだと考えます。

だからこそ、しっかり新作の画面構成でこれを撮ることに意味があります。モノクロが真のオリジナルというより、モノクロのオリジナルがあったような体裁で新作を撮り、人間賛歌とサプライズに全てを破壊する70年目のゴジラを描いた映画と考えます。

とは言え、バージョン違いを楽しむのもオツなもんで、どっちも劇場で見られてよかったです。

公開期間短いんだからもっと早く言えよと思うかもしれませんが、公開劇場数少なくて身バレしそうなんでいやです。

-1.0は、私生活の問題で2年くらい映画鑑賞を指パッチンしてた私を映画館に連れ戻した、という点でも個人的に思い入れのある作品で、ある意味当ブログの原点です。

そんな映画でゴジラ・シアターによる再上映の幸せな期間を〆られて、大変満足できました。

 

私みたいに見落としている人がいたら是非見て欲しい。あなたの感想も聞きたいから。

 

 

 

 

動画投稿はじめました。

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*1:画像引用元

eiga.com

無論、シン・ゴジラオルソを劇場で見られるのであれば。

前回

その映画、スクリーン初登場じゃないよね?

実はアマプラ無料です

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0CWL2CHTQ/ref=atv_dp_share_cu_r

前回までと異なり、私が生まれて以降に公開された作品です。つまり熱心なゴジラファンという名乗りは見せかけと露見したわけですが、去年は仕事忙しすぎてやばかったから仕方ない。

そんなわけで、シリーズの中でもとりわけ大衆ウケがよく、怪獣映画ではなく2016年を代表する映画の一本として評価されたシン・ゴジラ

その、モノクロ版の感想をつらつらと述べますが、如何せん漂白した元が元なのでカラーのほうについて語ると余白が足りません。

今回は原典の説明は省いて、改めて見た別バージョンの感想のみ記させて頂きます。

庵野秀明のカラー、モノクロの世界に。

座席に腰掛けて、何度か見た映画とスクリーンで2度目の遭遇。

序盤のブルーラインのくだりから、ゴジラ第三形態への攻撃を自衛隊が躊躇うくらいまで、私の感想は、「改めて面白い映画だけどべつにモノクロの意味ないな」

というものでした。

何故なら、シン・ゴジラの前半は東日本大震災の被害に関する示唆が多く、時事の意味合いが強いからです。制作サイドの思惑はさておき、観客の多くはまだ5年前の出来事。想起せずにはいられません。

故に評価の高い映画で、これのカラーを落としてしまえば、公開時期にあった意義が薄まる。

それが、前半部分の私の感想でした。

一方、ポスターで見たあのゴジラ、所謂シン・ゴジラ第四形態が登場して以降は、ゴジラ前作に通ずるテーマ「神に抗う人の有り様」にテーマ性がシフトします。

すると、モノクロと作風とのかみ合わせの悪さも自然と感じなくなり、そこには面白い映画の良い別バージョンがありました。

アニメ畑の監督らしく、ウソ臭い画作りが上手で、それもまたモノクロという巨大なウソを際立たせていました。

というか、私が「トップを狙え」の監督の名前を忘れていました。

シン・ゴジラ オルソ。劇場で見た価値は間違いなくありました。

「これぞ真のバージョン」と評判のマイナスカラーがより一層楽しみです。

あちらは終戦直後が舞台のモキュメンタリーですから、より馴染むことでしょう。

 

私みたいに見落としている人がいたら是非見て欲しい。あなたの感想も聞きたいから。

 

次回

無論、三大怪獣 地球最大の決戦を劇場で見られるのであれば。

前回

怪獣プロレスのフォーマットを定義した名作

前回の上映作vsビオランテが平成怪獣対決映画のフォーマットを定義づけた一作ならば、本作は怪獣対決映画そのものを仕立てたパイオニアです。

ゴジラの逆襲」、「キングコング対ゴジラ」、「モスラ対ゴジラ」。この映画までの道中で、一通りの対決をこなしてきた怪獣王ゴジラですが、この映画に至ってはタイトルに名前がございません。

というのも、この映画の公開に先駆けて世に送り出された「モスラ」、「空の大怪獣ラドン」。タイトルにある三大怪獣に残る2匹は、単独作を持つ立派な主役です。

つまり、ここで言う「三大怪獣」とは「アベンジャーズ」と同義なんですね。

主役ではない最初の大物怪獣、キングギドラ

一応、「ゴジラの逆襲」でも怪獣プロレスの相手役として主演作を持たないアンギラスが登場しています。ですが、逆襲に関してはヒット作の数字を逃さず追うために作られたという経緯のせいか、予告編すら存在しないタイトル通りのゴジラの続編です。アンギラスゴジラが対決する映画ではなく、再登場したゴジラにもう一匹怪獣が出るシナリオがあるだけなんです。

第二作でありながら、対決怪獣としてアンギラスの描写も丁寧に行われ、オキシジェンデストロイヤーという一発限りのデウス・エクス・マキナに頼らず抗う人間サイドのつけた決着。映画としては前期昭和*1ゴジラで一番ぐらい好きです。

ですが、三大怪獣という地球が遣わしたドリーム・チームのアベンジを受ける相手役としてデザインされたギドラ。彼が最初の敵役専門。映画タイトルを冠しながら主役タイトルを持たない最初の怪獣スーパーヴィランと言わざるを得ないでしょう。

要はゴジラシリーズのサノスなんですね。

真面目に映画の内容、特撮の話をするならば、ギドラの破壊描写は圧巻の一言です。これだけのためにチケット代を払った価値があるというものです。

東京から富士山麓にかけての破壊描写はラドンで培ったノウハウを生かしつつ、引力光線というギドラの個性、口から出るのに地を這う稲妻のようなエフェクトで彩られた映像は、正に圧巻の一言です。

一方で、ドラマ部分に関しては残念ながら杜撰さにまで磨きがかかっております。

某国の暗殺されかけた王女が、金星人のワームホールに保護された代わりに預言者としての役割のために体を貸す、という筋書きは悪くはありません。

ですがこの金星人、地球人に呼びかける警告の悉くが具体性を欠いていて、浮浪者同然の恰好をしていたことも相俟って劇中で度々キチ〇イ呼ばわりされます。

あまりよろしくない単語が連呼されて劇場がちょっとざわついた挙句に、何故か上映終了後に「現在の価値観では~」の注意書きが表示されるものですから、皆様噴き出しておりました。

また、王女を追うアサシンがこれまたポンコツの極みで…

前回のvsビオランテと同じじゃねーか!!!

ある意味、一貫性のある再上映と言えるのでしょうか。

そう言えば、今作もアマプラ無料でございます。

 

私みたいに見落としている人がいたら是非見て欲しい。あなたの感想も聞きたいから。

*1:初代ゴジラは神なのでシリーズであってシリーズではないとする。

ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ観に行きました。/ネタバレ山盛り感想

今日のところは俺の勝ち

本記事に政治的意図は一切ございません。

また、私の感想・意見に対して、賛同若しくは愚かにも反対意見を述べることで、インターネット上でアジテーションネガティブキャンペーンに用いる場合、看過します。

ですが、個人的な考えとして、インターネット上で政治活動を行う方々について、私は対等な人間と見做しておりません。あなたが空を飛ぶときに、姿勢が左右のどちらに傾いていようとも、私に言わせれば文字のやり取りで人を啓蒙できると錯覚している怠惰で愚かな昆虫です。

それでは、議論に見立てたままごとだけは控えて頂いたところで、映画の感想に話を戻しましょう。

ジョーカーの話をしよう。

今作の感想を語るうえで、前作の私の感想を述べずにいるわけにはいかないでしょう。

非常に出来のいい映画で、世相への問題提起もあり、一躍話題になった前作。

それを敢えて一言で表すならば

真っ当なヴィランの単独オリジン映画

でした。

決して欠点のない善良な市民ではないが、少なくないハンデを抱え、不遇な日々を過ごす主人公。何が悪いのかわからないまま、劣等感と絶望だけが育ち続け、ついに名のある悪が生まれてしまう。彼がいかにしてスーパーヴィランと呼ばれるものになったのか、丁寧に描いた筋書きです。バットマン関連の小ネタもふんだんに仕込まれたいいスピンオフ、という印象でした。

近い時期に公開されたヴェノム第一作が、娯楽作として良かったけどヴィラン性よりヒーロー要素が圧倒的に強くないかという疑問が強く残る作品だっただけに、なおの事そう思いました。

ですから、この映画を社会問題を射抜いた弱者の救世主などと述べている人間を馬鹿だと思うわけです。

確かに、アーサー・フレックの抱える障害や、社会保障が取りこぼす層の描写など、社会問題に関する示唆の多い映画でした。けど、タイトルは飽くまで「ジョーカー」。ウソ臭いほど汚いゴッサムシティや、トーマス・ウェインなどの各キャラクターについては、紛れもなくコミックの映画です。

弱者救済の必要性だとか、悪が生まれ得る現実への警告などといったものは、メインテーマとして受け取りませんでした。

 

いつもは極力控えてる、Twitterで革命を目論む弱者ビジネスのカス共と首魁のキャスリーン・ケネディの罵倒をする口実が見つかったので、気がすむまでやらせていただきました。ジョークとネタバレを受け止められない方は、ここからスクロールしないでください。

 

 

見渡す限りの踊る馬鹿、踊らさせてる奴がいるかどうかもわからないままに。

https://eiga.com/movie/98960/

この映画、普通に面白いです。

なぜ叩かれているのかわからない。心当たりがあるとすれば前作からありもしないメッセージを受け取った馬鹿の逆ギレだけです。

前作から引き継いだテーマ、「あなたの弱さが救われないことは悲劇だけど、暴力を肯定するわけにはいかない」という部分が今作で更にブラッシュアップされています。

レディー・ガガ演じるハーレイ・クインはどうなることやら、予告編の時点ではいつもの精神科医ではなくアーサーと同じ精神病棟の患者で、期待半分不安半分。

鑑賞してみれば、正体はいつも通りの精神科医で、前作のジョーカー事件で正気を失った一人という、イメージに忠実なキャラクターでした。

それでいて、キャスティングは大物。彼女は公正な裁判を受けようとするアーサーを、ジョーカーに戻そうとする狂言回しの大役を引き受けています。

故に、ミュージカル要素が差し込まれるのです。こちらの公開前の不安要素も終わってみれば大したことはありませんでした。むしろ、ミュージカルを売りにしているのに、映画的すぎてガガの歌を聞きに来たファンはがっかりするのではないかと思ったくらいです。

というのも、歌い始めるシーンの大半がアーサーの心象風景の描写だからです。ミュージカルが敬遠される要因として考えられる「急に歌う」導入も、何せ狂人の頭の中の描写ですから、「ラスベガスをやっつけろ」みたいに本当にその通り映像にされるよりもよっぽど飲み込みやすい構成でした。

歌への導入がストーリーラインに忠実すぎるので、歌劇を期待して観に行くほうが損するかも知れません。

予告編で使っていた暴徒のシーンはほっとんどなく*1て、収容所と裁判所の会話劇だけで話を転がす構成には面を食らいました。

ですが、裁判所に詰め寄るジョーカー信者たちを描写しないからこそ、アーサー・フレックの審理と心理を描くストーリーとして一貫性を持たせることができたと思います。

前作のように、ゴッサムを歩くだけで報われない思いを噛み締めるアーサーと、ジョーカーになってからそれまでの全てをぶっ壊すダイナミックな面白さはありませんが、サスペンスとして歯ごたえのある良作と断言できます。

ジョーカーが街に舞い戻り、全てを馬鹿にして笑って終わる映画ならば、「みんなが求めてるのはアーサーではなくジョーカー」というストーリーの構成に説得力を与えることは不可能でしたね。序盤から妙に印象的なGOTHAMのジェロームっぽいにーちゃんに刺されて終わるのはビビりましたが、主人公が死んで終わる映画の中では久々に当たりを引いたと思いました。決してちゃぶ台返しではありません。

ヒーロー不在のヒーロー映画として、これ以上ない2作だったと思います。

弱者であることはとても悲しいけれど、それは全てを笑い飛ばして爆破することを正当化しない。弱さに負けた暴力の先にあるのは破滅だけ。これほどのヒーローらしい作品はなかなかないでしょう。

 

私みたいに見落としている人がいたら是非見て欲しい。あなたの感想も聞きたいから。

 

*1:鑑賞後再度確認したところ、未使用らしい未使用部分がなかったため、プロモーション的な都合があったのかも知れません。

無論、ゴジラvsビオランテを劇場で見られるのであれば。

前回

いよいよゴジラ・シアターも平成へ

https://tohotheaterstore.jp/items/TBR33242D

1984年、「メカゴジラの逆襲」までの昭和ゴジラシリーズの設定をリセットし、今で言うところのリブートをコンセプトに制作されたゴジラ(1984)。

こちらの続編として5年後に公開され、後にvsシリーズと呼ばれる平成のゴジラ対○○の第一弾、それがvsビオランテ。今作です。

vsシリーズは、ミニチュア特撮が極まり、CG本格化前夜となる90年代の怪獣映画の特異点とも言うべき時期の作品群です。近い時期にはゴジラに限らず、平成ガメラ三部作や平成モスラ三部作など、特異な人気を持つ作品も数多くございます。

そんな世紀末の怪獣映画ブームのきっかけとなった本作ですが、個人的な好みを言わせて貰うと、vsデストロイアとvsスペゴジとvsメカゴジラとvsモスラの次に好きです。

1年ペースでゴジラ撮ってたのやばいなあ

VSのつくゴジラシリーズは、フォーマットが定型化されたのが実は第三作「vsキングキドラ」からで、それまでは年一の定番企画ではありませんでした。(84年ゴジラ、89年公開のvsビオランテ、91年公開のvsキングキドラ)

リブートである84年ゴジラはともかく、本作と定期化第一弾のvsキングキドラには映画として評価するうえでひとつ大きな難点がございます。

なんか設定回りフワフワしてるししょぼく見える

年一企画として型が確立したvsモスラ以降と違って、新しい映画作りを模索した結果ずっこけた要素がところどころあるんですよね。

じゃあ行儀のいい後半の作品だけ見てればいいのではないかとお考えかもしれません。ですが本作と、vsキングキドラに共通する、劇場で絶対に見るべき要素がございます。

ゴジラと対決するライバル怪獣を90年代のミニチュア特撮で見られるのはこの作品だけ、ビオランテが見られるのはvsビオランテだけ。

結局怪獣ならなんでもいいのかと聞かれたら、回答を差し控える。

アマプラあるよ

https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B00JO60BIM/ref=atv_dp_share_cu_r

というわけで見てきましたVSビオランテ。やはり、映像の迫力は見事なもので、チケット代の価値はあったというものです。

迫力の操演、圧巻の模型特撮。アナログ怪獣映画好きにはたまらない要素が敷き詰められた素晴らしい映画です。

そして、スクリーンで見たことで僕のこの映画に対する誤解が解けた

わけではありませんでした。

だってヘンなんだもんこの映画!真っ当でないもんを真っ当って言ったらウソだよ!!

まず、この映画のヘンなところはあの有名な宇宙に放たれる沢口靖子ではありません。

実はこちらのvsビオランテゴジラに対抗できる核を無効化できるバクテリアが、ゴジラ無き後の世界のパワーバランスを崩すという、すごくまともなテーマでストーリーを走らせています。

その設定を使ってやることが、アメリカの軍需産業のエージェントが自衛隊に先制してぶっぱなす、謎のアラビアンスナイパーもそれに介入する、本当に説明なく登場する超能力。

いや、テーマはいいんだから諸外国の描写いらないじゃん。匂わすだけでもストーリーにはなるよこれ!!特に、この作品には黒木特佐や権藤一佐など、vsシリーズ中でも屈指の人気キャラが登場するので、尚更ヘンな外国人の描写がずっこけて見えます。

ストーリー上の必要性もこいつらにはありません。ビオランテの登場も、白神博士の暴走だけで済む話に、わざわざ変なスパイの銃撃戦を被せてきます。ゴジラ復活に関しても、アメリカの産業スパイがゴジラが前作にて落下した三原山に爆弾を仕掛けて脅迫、という筋書きに一応なっています。

ですが、べつにこいつの爆薬関係なく序盤からゴジラ起きてきそうな描写がありました。シリーズに頻出するG細胞同士の共鳴もありましたし、ヘッポコスパイどもの必要性の無さは何度見ても浮きすぎてイライラします。

冒頭のヘンテコ銃撃戦で流れるアップテンポアレンジのゴジラのテーマといい、明らかに当時の流行りをノリで入れたような描写がこいつらに凝縮されています。

謎に最後まで生き残ったアラビアン産業スパイを締まらない感じで成敗したときの「バットマンみたいだったわ」という台詞には鑑賞回数ぶんの舌打ちをしております。

時期はズレてるけど楽曲がところどころクリストファー・リーヴ版スーパーマンっぽいのも、もしかしてそういうこと?

流行でノリで入れちゃった要素と言えば、次作vsキングギドラで登場するヘンテコスライド偽ターミネーターも大概ですが、あっちはゴジラを消すタイムトラベルという設定ありきの産物で、こっちは核の抑止力とゴジラというちゃんとしたテーマからの大いなる脱線です。やっぱりヘンだよこの映画。

ノリで入れちゃった要素と言えば超能力。小高恵美演じるサイキッカー少女三枝未希は本当に説明もなく登場します。そしてわけわからん産業スパイバトルに尺もってかれたので事後の説明も大して行われません。

この三枝、本作のよくわかんないポっと出ヘンテコキャラ…ではなく、vsシリーズほぼ皆勤の主要キャラクターになります。

そう、前回鑑賞した「コング対」がそうであったように、本作もまた、シリーズのフォーマット作りに大きく貢献しているのです。こういうの怪我の功名って呼んで正解ですかね?

作品ひとつひとつのクオリティは大事ですが、粗削りな要素を目いっぱい放り込んでみて、結果よかった要素を引き継いで後期作がイイ感じなることも、古い続編群の持ち味でしょう。我々は少し、ユニバースなどとキッチリしすぎた作品作りに慣れすぎてしまったのかも知れません。

とにかく、怪獣ズドーンは圧巻の一言で、ストーリーラインもまあ、そこまでアレじゃない…とは言えないなあ。やっぱニセ産業スパイバトル意味わかんないや。でもこれと変な未来人があったから、サイキッカーいてもストーリー真顔で回せるvsモスラ以降の構成ができたんだよなあ。難しいね。

 

私みたいに見落としている人がいたら是非見て欲しい。あなたの感想も聞きたいから。

 

次回