バードマンの監督の新作、なんか公開しているらしい
スーパーガールからこっち、めんどくさいだけのことスパイダーバースレジスタンスなどと称してスパイダーマン新作すら観ず、映画館に行く習慣が途絶え、気が付けば季節は秋。
ないような四季が冬に切り替わる11月はついにゴジラ新作!
習慣を取り戻しておきたいなと思い、DCU新作『クレイフェイス』や実質仮面ライダーバンド美少女アニメ『avemujica』などを候補にピックしていたところ、無視できない情報が飛び込んできました。

あの『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』のイニャリトゥ新作、賛否両論をひっさげやってきた!
バードマンはお気に入りの映画のひとつで、そのくせ監督の名前は覚えてなかったけどしかも賛否両論。
最近シネフィルっぽい映画を映画館で観ていない…というか前回が2月の『モディリアーニ!』だったので、そろそろ大衆向け以外もいってみよう。
色んなジャンルを垣間見てこそ、作品の味わいってもんです。多分ね。
ネタバレ注意!
今作はいつも以上に、作品の内容を知ってしまうと視聴体験が大きく変化してしまう構成となっております。
観賞前に本稿をご覧頂く場合は、その点をご検討の頂くようお願い致します。
それでは、今作の要点のおさらいから掘り下げましょう。
冒頭から飛び込むのは、いかにも悪辣な成金野郎。
トム・クルーズ演じるディガー・ロックウェルが、アメリカ政府を半ば傀儡に、無責任な掘削によって世界ごと没落する。
…という、ドクター・ストレンジ・ラヴすぎる露骨な風刺が陳腐を極めたところで、幕は降ろされ、これが劇中劇であることが示されます。
第二幕へつづく。
公式サイトなどのイントロダクションは全て、作品の中の作品。
ギミックでしかなかったのです。
じゃあ一発芸なのかと言われたら、勿論そんなことはありません。
何せ私は面白半分で開いたネタバレ感想でそれを知り、バードマンとの類似点に興味を抱いて鑑賞を決意しました。
役者の視点から自作やそれを取り巻く環境を批判し、問題提起する。
それこそバードマンの焼き直しではないかと思うかも知れませんが、今作の特徴的はむしろ正反対。
楽屋裏の存在が明らかになった後も、飽くまで劇中劇で「ディガー」の物語を中心に映画も進み続けます。
同じ引用ばかりになってしまいますが、バードマンが楽屋裏の狂騒曲を通じて創作の苦悩を描いたために、表面的には演目『愛について語るときに我々の語ること』を知らなくても、意味の通る映像であったことと対照的に見えます。
今作も同様に楽屋が交差し、役者の懊悩がフォーカスされます。
ですがそれらを踏まえた作品の主張するところは、ほとんどが劇中劇という形で提示され、クライマックスに至る構成です。
劇中劇、楽屋オチを抱えた作品は数あれど、劇中劇であることをバラしたうえで、楽屋ではなく創作の中の創作に軸足を置いた内容は、珍しいのではないでしょうか。*1
更に、今作は決してネタバレ知って魅力が損なわれる作品ではありません。
アメリカの愚かしさの煮凝りのような男、ディガー・ロックウェル。
これが作中作と明かされても尚、我々はそのおかしさを笑わずにはいられません。
しかし、合間を縫って登場する楽屋パートで示唆が積み重ねられ、実はこの演目が作中世界における伝記映画。
つまり、彼らが演じている内容は、アメリカの無謀なエネルギー掘削で滅びかけた現在の地球。それを齎した愚者、ディガー・ロックウェルを笑い飛ばし、今日を生きるための喜劇であると明らかになります。
これこそが巧妙に隠された第二の真実であり、幕が降りてカットされても、今作がその価値を損なわない本当の理由です。
よく見てみれば楽屋の通信機器が妙に未来的だったり、示唆はあります。
しかし舞台演劇というアナログな現場によって攪乱され、我々はディガー・ロックウェルを誤って理解してしまいます。
過去のアメリカを象徴する愚者であると。
しかし、作中の実際における演劇の意図は半世紀すぎたかも怪しいとき。
核戦争以上の悲劇を起こし、現実をポストアポカリプスに塗り替えた。
ヒトラー以上に憎まれているであろう、大量殺人者が実在した過去を、喜劇に変換して乗り越えるという涙ぐましい取り組みだったのです。
これは賛否両論もやむを得ないでしょう。観客の冷笑的な側面をチケット代払わせて、挙句巻き込んで批判しているわけですから。
私は論旨こそ理解が及ぶものの、そこまでして作品という体験に疑義を呈することに共感できませんでした。
ですが、今作は非常にオススメの映画作品です。
二重のどんでん返しを積み重ねるシナリオ、行き来する楽屋の描写の少なさを含めて、その巧妙さという面白さは間違いありません。
トム・クルーズ演じるディガーも、上映時間を増すごとに多義的な面白さが上乗せされ続けます。脇役もそれに追従する力を抱えています。
大袈裟な独裁者の道化の演技だけでなく、「実は未来」という布石を探すという楽しみを助長する点においても、スクリーンでの鑑賞を推奨したい作品です。
私みたいに見落としている人がいたら是非見て欲しい。あなたの感想も聞きたいから。
*1:不勉強に対するご指摘をお待ちしております。